: ファジィ推論の概括
: ファジィ推論の概要
: ファジィ推論法2
  目次
この推論法の規則の前件部は推論法1と同様であるが,後件部は前件部の変数の線形式として与えられる.図3.10に推論法3のファジィ規則の例を示す.図に見られるように前件部のファジィ集合は台形型にする.
図 3.10
推論法3のファジィ規則例
|
ここで,
が与えられたら各規則に対する適合度は推論法1と同様に求める.しかし各規則の推論結果は適合度に関係なくそれぞれ規則の線形式の変数,に事実によって与えられた値,を直接代入して得られる値とする.そして,全体の推論結果としては各々の推論結果の適合度による重み付き平均を求める.
この推論法の前件部は,図3.11のように平面を分割しているとみることができる.ここで,それぞれの領域の番号は,規則の番号に対応している.ただし,それぞれの集合は,台形のファジィ集合となっているのでそれぞれの分割の間には重なり合った部分がある.これがファジィ分割と呼ばれるものである.さらに,それぞれの規則に線形式が割り当たっていることは,それぞれのファジィ分割領域に平面の式が割り当てられていることに対応する.ここで,それぞれの規則に対応した分割領域をすべて集めるとこれは平面を網羅するから,平面は,平面のつぎはぎによって覆われることになる.ここで,ファジィ分割の境界ははっきりしたものではなく互いに重なり合いながら徐々に変化しているから,それぞれの平面の継目は,なだらかにつながり,結局,図3.12のような曲面が平面上に定義されたことになる.
図 3.11
ファジィ分割
|
図 3.12
推論法3による入出力関係の例
|
このようにして見ると推論法3は全体として,
という形の非線形関数を表しているものと考えられる.図3.12に見られるような結構複雑な関数が,たった四つの規則と線形関数で表現できていることから推論法3が非線形関数の近似モデルとして有効なことがうかがわれる.
あらかじめ代表的な場合の線形モデルが得られていて,あとはその間をうまく補間すればよいような問題の場合は,本手法はそのまま適用可能である.しかし入出力関係のデータだけがわかっていて,その入出力間の近似モデルを得たいという場合は,どのような分割を行い,それぞれの分割にどのような関数を割り当てればよいかを決定(同定)する必要がある.この同定方法には,必ずしも確立した手法はないが,不偏性規範に基づいた同定法が提案されている(文献[B-1]に紹介されている.).ただし,この方法は,繰り返し計算を多用しており,また簡単化のための操作も加えられているため,必ずしも最適値に集束はしないものと思われる.
平成12年5月17日