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: タイプ2ファジィ集合とその基本演算 : ファジィ理論の数学的基礎 : ファジィ数とその計算   目次

三角型ファジィ数とその計算

前節までは,ファジィ数のメンバシップ関数として正規で凸な任意の連続なメンバシップ関数を取り扱ってきたが,実際の応用において,さらに取り扱いを簡単にするために,特別なファジィ数,即ち,図4.28のような三角型ファジィ数を用いることが多い.この三角型ファジィ数は図のように,

\begin{displaymath}    
M=\ll m_1,m_2,m_3 \gg    
\end{displaymath}

という形で簡単に表記できる.このようにパラメータで表記された三角型ファジィ数間の四則演算は,パラメータ間の演算を用いて非常に簡単に求めることができる.即ち,ここで二つの三角型ファジィ数$M,N$

\begin{displaymath}    
M=\,\,\ll m_1,m_2,m_3 \gg, \,\, N=\,\,\ll n_1,n_2,n_3\gg    
\end{displaymath}

とすれば,


となる.ここで,乗算と除算の場合は近似的な意味で成り立つことに注意する.これは,図4.29の例にみるように,三角型ファジィ数同士の四則演算を拡張定理に基づいて厳密に計算すると,乗除算が実際には三角型にはならないためだが,大ざっぱにこの結果も三角型とみなせば上のような近似が成立し,実用上は,問題のない場合が多い.加算,減算については,厳密に成立することは,拡張定理を用いて確かめられるが,ここでは,省略する.ただ,ここで,減算と除算において,$n_1$$n_3$が入れ替わるのは,4.8節の区間分析法における区間間の演算において,引く区間,あるいは割る区間の左右が入れ替わることに起因していることをいい添えておく.

図 4.28   三角型ファジィ数の例

図 4.29   三角型ファジィ数の四則演算

三角型ファジィ数よりもう少し複雑なファジィ数のメンバシップ関数を扱えるものとして,$L-R$ファジィ数とその簡易計算法なども提案されているが,これについては文献[B-5]などを参照のこと.

平成12年5月17日