next up previous contents
: ファジィ論理と種々の論理体系 : ファジィ命題の確率限定 : 確率限定命題と傾向命題の解釈およびその真偽値   目次

確率限定の実例

ここでは,「日本人が黒髪であるということはほとんどの場合に真である」という例を考えて,前節で説明した確率限定を実際に行ってみる.さて,この命題は,「日本人」を表すファジィ集合$J$と,「黒髪の人」を表すファジィ集合$B$を導入すれば,
\begin{displaymath}  
\mbox{($J$\ is $B$) is likely}  
\end{displaymath} (3.8)

という形のファジィ確率限定命題で表すことができる.そしてこれは,さらに
\begin{displaymath} 
\mbox{most $J$s are $B$s} 
\end{displaymath} (3.9)

という形の傾向命題に書き換えられる.この傾向命題は内容的には,「ほとんどの日本人は黒髪である」ということを表している. さて式(3.9)の命題の真偽を実際に確かめるために実際に10人の人($u_1,...,$ $u_{10}$の10サンプル)を成田にでも行って調べてみたとする(むろん10人では少なすぎるだろうが,問題の簡単のためにこう仮定する).すると次のような「日本人」のファジィ集合$J$と「黒髪の人」のファジィ集合$B$が得られたとする(図3.1参照).
  $u_1$ $u_2$ $u_3$ $u_4$ $u_5$ $u_6$ $u_7$ $u_8$ $u_9$ $u_{10}$
$\mu_J(u_i)$ 0.2 0.4 0.8 1.0 1.0 0.6 0.2 0.0 0.0 0.0
$\mu_B(u_i)$ 0.0 0.0 0.4 1.0 1.0 1.0 0.8 0.4 0.4 0.0
0.0 0.0 0.4 1.0 1.0 0.6 0.2 0.0 0.0 0.0

図 3.1   「日本人」のファジィ集合$J$と「黒髪の人」のファジィ集合$B$


例えば, $\mu_J(u_3)=0.8,\mu_B(u_3)=0.4$となっているが,これは,$u_3$の人は日本人らしさが0.8,つまり,ほぼ日本人ではないだろうか(ひょっとしたら外国人の血が少し混じっているようにも思えるが)と思われることを示しており,またこの人の髪の色が黒いということが0.4程度いえることつまり黒っぽい髪をしているが黒ではない(例えば少し赤茶けた色など)をしていることを表している. さてここで$B$$J$に対する相対シグマカウントを実際に計算すると次のようになる.

(3.10)

さてここで,ファジィ限量作用素mostを図3.2のようなファジィ数として適当に定義すれば,
\begin{displaymath}
\mu_{\mbox{most}}(0.76)=0.72
\end{displaymath} (3.11)

と計算されて,これが,最初の確率限定命題「日本人が黒髪であるということはほとんどの場合に真である」の真理値となる.

図 3.2   ファジィ限量作用素mostの例


next up previous contents
: ファジィ論理と種々の論理体系 : ファジィ命題の確率限定 : 確率限定命題と傾向命題の解釈およびその真偽値   目次
平成12年5月17日