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: ファジィ命題の可能性限定 : ファジィ命題の逆真理値限定 : 逆真理値限定   目次

逆真理値限定の用途

逆真理値限定は,特にファジィ理論を認識関係に応用する場合には非常に重要な考え方である.次のような例を考えてみればよい.いま色彩を認識したいとする.このとき,まず各色の概念を定義する必要がある.例えば,「赤」という概念を定義するのに,変数$X$$X$は色相を表す変数とする.)と適当なファジィ集合$A$$A$は色相の全体を台集合とするファジィ集合で,「赤」の概念をうまく包含するように定める.)を用いる.すると,「ある色が赤である.」という命題は,「$X$ is $A$」というファジィ命題で表現できるであろう.ここで,実際に,あるサンプル(例えばピンクっぽい色だとする.)をもってきて,この色を認識したいとする.このとき,そのサンプルの色相の分布を調べれば,そのサンプルの色に関する観測事実もまた,適当なファジィ集合$B$$B$も色相の全体を台集合とするファジィ集合で,観測事実をうまく包含するように定める.)を用いて「$X$ is $B$」なるファジィ命題で表現できるであろう.さてここで,このピンクっぽいサンプルの色が「赤である」とどの程度いえるか,つまり,このサンプルの色を「赤」と認識することがどの程度正しいといえるかという問題を考える.するとこれは,「$X$ is $B$」なる観測事実から「$X$ is $A$」であるとどの程度までいえるかという問題であり,結局,「$X$ is $B$」なる命題から,「$X$ is $A$」がどの程度「真」かを限定する限定(ファジィ)真理値を求める問題に帰着され,逆真理値限定の手法に他ならないことがわかる.このように,逆真理値限定は,観測されたサンプルを予め定義された概念として認識することがどの程度正しいものかを求める手段を提供している.

平成12年5月17日