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: ファジィ理論の数学的基礎 : ファジィ推論の概要 : ファジィ推論法3   目次

ファジィ推論の概括

3.2から3.4で見てきたように,現在実用になっているファジィ推論技術だけでも多用なバリエーションがある.また研究レベルでは,さらに高級な推論技術も多数提案されている. しかしここで,推論法1から推論法3を比較すると,次のような共通点が浮かびあがってくる.即ち,
  1. 推論規則は並列的に並べられる.
  2. 前件部と事実との適合度によってそれぞれの規則の適合度が決定される.
  3. それぞれの規則の後件部は,規則の適合度によって重み付けられて結合される.
並列的な規則が並列的に評価され,最後に適合度によって結合されている.ここにファジィ理論の特徴である並列性の特徴がでている.感覚的にいえばすべての可能性を並列に調べてみて,それぞれの結果が得られうる可能性の大きさに見合った重み付けをして全体としての結果を推論しているといえる.またこのように本質的に並列なアルゴリズムとなるため今後の並列計算機には非常に適したものとなっているのも事実である. 反対に推論法1から3では,後件部とその統合の仕方に違いがあらわれている.ファジィ推論の後件部としては,大ざっぱにいうと何を持ってきてもよいと考えてよい.ファジィ集合だろうと,クリスプ集合だろうと,線形モデルだろうと,それぞれの規則の後件部が同列に比べられるものである限りはよい.そして,規則の適合度に応じて後件部の寄与度が変わるように適当に結合して,結論を得ることができる. 一般に,どのような後件部モデルを持ってきてもその数学的な解釈は可能であるが,しかし,この場合ファジィ理論の導くのは各規則の適合度,つまり,各結論の寄与度までで,それらの結論の重み付け統合化の方法については,ファジィ理論は何も語らないことに注意する必要がある.これについては,妥当な結果を導くようにモデルごとに個別に検討する必要があるだろう.特殊な場合,つまり,推論法1や2のように後件部がファジィ理論に基づくモデルの場合は,当然,結論の統合化の方法にファジィ理論を用いることはかのうである.

平成12年5月17日