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: ファジィ推論の概要 : ファジイ理論の概要 : ファジィ集合と可能性と確率と   目次


ファジィ理論の応用技術と応用分野

ファジィ理論は,1965年にファジィ集合とその演算の基礎概念が導入されて以来発展を続け,現在,その研究が様々なレベルで大きな広がりを見せている.ファジィ理論だけで学会がいくつもある程で,基礎理論から応用に至るまで,現在進行形で研究が続けられている.表2.2から表2.4にファジィ理論の応用の現況を転載する$^{[B-3]}$

基礎理論レベル

ファジィ理論はある一つの数学体系として形造られてきてはいるが,未だ完成したものではなく基礎的な研究は現在も続けられている.また,可能性理論などの様相性とファジィ理論との関係などの研究も盛んに行われている.

ファジィ応用基礎技術レベル

ファジィ理論応用の基礎技術としては,ファジィ推論,ファジィ多目的計画法,ファジィ・クラスタリング,ファジィ論理など,またファジィ理論を応用するための道具として,ファジィ・コンピュータ,ファジィ・プログラムなどが研究されている.

ファジィ応用システム・レベル

制御システム,診断システム,評価システム,意思決定支援システム,データベース,ヒューマン・インタフェイス,パターン認識など多岐にわたる応用システムが実用化されている.

実用化されているファジィ理論分野

一口にファジィ理論とはいっても上のように多岐にわたる研究が行われているが,現在実用化されているファジィ応用システムは,そのほとんどが,ファジィ制御技術であり,これは,ファジィ推論技術がその基礎技術となっている.またそのファジィ推論技術はさらに可能性理論に裏打ちされていると見てよい.その他の応用システムもその大部分はファジィ推論技術が大きな鍵となる.これは,ファジィ理論が人間の主観的な概念を取り扱うのに都合が良いことからも当然の帰結であろう. 現在までの応用システムは,単純なファジィ推論に基づくファジィ制御がほとんどであるが,これからは,さらに複雑な推論技術を必要とする,他の応用システムの実用化が盛んになるであろうし,それによりファジィ理論の真価がより発揮されるであろう.

ファジィ理論の画像,図形分野での応用

画像,図形の分野での応用は始まったばかりであり,まだそれほど実用化されているとはいえない.この中には,ファジィ・クラスタリングによる画像分析などの,ファジィ推論を用いない応用例もあるが,ほとんどは,パターン認識(図形認識,輪郭線認識,文字認識など)の方法の一部としてファジィ推論技術を用いたものである. この分野でのファジィ理論応用として,画索そのものに対してプリミティブなレベルでファジィ理論を適用する方法(ファジィ・クラスタリングがその代表)は興味深いが,現在実用化の見通しがたつとはいい難い.また,このようなミクロなレベルの曖昧さを取り扱うには,むしろニューロ技術の方が適している可能性もある. これに対し,推論を伴うようなもっとマクロなレベルでのファジィ応用は,大いに有効である可能性がある.ただこの場合,ファジィ推論技術単独では,認識システムの構成は難しく,他の技術と結合した総合的な技術が必要となる. また,画像や図形そのものの認識に問題を限定しなければ,画像や図形を処理する際のヒューマン・インタフェイスとしてファジィ推論技術を有効に応用できる可能性が大きい.

表 2.2   ファジィ・システム理論の応用の概況$^{[B-3]}$



表 2.3   日本におけるファジィ・システム理論の応用分野(アンケート結果)(昭和59〜60年)$^{[B-3]}$



表 2.4   ヒューマン・インタフェイスとファジィ・システム理論や概念の対象$^{[B-3]}$




平成12年5月17日