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緒言

前回の報告書(図形処理及び画像処理におけるファジィ理論の応用と研究 −基礎調査報告書−)$^{[1]}$)においては,ファジィ理論の基礎から主にタイプ1ファジィ集合を用いた推論までについて報告し,ファジィ理論についてある程度見通しが利くようになった.しかし,タイプ1ファジィ集合による推論は制御問題には向くが,図形や画像の分野での応用で必要となってくる意思決定や認識といった高度な推論を必要とする問題には不十分な技術であった. そこで,本報告書では,より高度な推論を可能とすると期待されるタイプ2ファジィ集合に焦点をあてて,この基本的性質を考察し,これを実際に応用に用いるためにどのようなアプローチを行うのが適当かについて検討を行う. 本報告書は6章よりなる.第1章から第3章までは,高度な推論を行うための基礎となる,ファジィ命題に対する種々の限定法に関して考察する.この考察により,タイプ2ファジィ集合の必要性が明らかになるが,第4章での種々の理論体系の数学的構造に関する基本的考察をもとに,第5章,第6章でさらにタイプ2ファジィ集合をどのように取り扱えば応用上有効に取り扱えるかについて考察する.ここで各章の内容を以下に挙げる.

第1章 ファジィ命題の逆真理値限定

前報告書で紹介した言語的真理値限定を整理し,この逆の過程として得られる,逆真理値限定法について概説する.また例を挙げて,これが本質的に認識問題のための手法であることを示す.

第2章 ファジィ命題可能性限定

「($X$ is $A$)が可能である」というような可能性にかかわる言葉で限定された場合にこの標準形がどう求められるかという可能性限定法について概説する.また,ここで,可能性限定によって自然に導入される部分的無知の概念についても解説する.

第3章 ファジィ命題の確率限定

「($A$ is $B$)がほとんどの場合に真である」というような形の確率限定問題の真理値の求め方について実例をまじえて概説する.

第4章 ファジィ論理と種々の論理体系

第5章,第6章でタイプ2ファジィ集合に関して,もう少し深い考察をするための準備として,古典論理,直感主義論理,様相論理の代数的な構造について整理し,またファジィ論理とのかかわりあいについて考察する.

第5章 可能性,必然性と区間真理値

タイプ2ファジィ集合の言語的真理値と可能性,必然性の関係について考察し,さらに,可能性と必然性から求められる区間真理値が言語的真理値をどのように近似できるかについて考察する.

第6章 ファジィ・インターバル論理

区間真理値の一般化として最近提案されたファジィ・インターバル論理について概説および考察をし,これが,タイプ2ファジィ集合の言語的真理値の近似モデルとしてよい性質をもっていることについて述べる.



平成12年5月17日