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: ファジィ集合に対する可能性測度と必然性測度 : 可能性,必然性と区間真理値 : 可能性,必然性と区間真理値   目次

クリスプ集合に対する可能性測度と必然性測度

本節では,まず可能性,必然性とはどのようなものかを感覚的につかむために,クリスプな集合のばあいだけを考えて考察する. さて,ある全体集合$U$の中の二つの部分集合(クリスプ)$F,A$を考える.そしていま,
\begin{displaymath}  
\mbox{$X$\ is $F$}  
\end{displaymath} (5.1)

だとわかっているとする.つまりこれは「$X$$F$の要素である」とわかっていることを意味する.このとき,
\begin{displaymath} 
\mbox{$X$\ is $A$} 
\end{displaymath} (5.2)

ということ,即ち「$X$$A$の要素である」ということがありえるかどうかを考える.これが即ち「可能性」であるかないかを考えることである.すると,集合$F$$A$の間に重複する部分があれば,つまり$F\cap A$が空集合でなければ,そういう可能性があって,重複する部分がなければ,つまり$F\cap A$が空集合であれば,そういう可能性がないことは容易にわかる.そこで,「$X$$F$の要素であるとき,それが$A$の要素である可能性」を$\Pi_F(A)$と書き,そのような可能性があるとき,$\Pi_F(A)=1$,可能性が無いとき,$\Pi_F(A)=0$と書くことにすれば,

(5.3)

となる(図5.1参照).

図 5.1   クリスプ集合の可能性測度の例

一方,「$X$$F$の要素である」(式(5.1))とわかっているときに,「$X$$A$の要素である」といえないはずはないといえるかどうかについて考える.これが即ち,そうである「必然性」があるかないかを考えることである.すると,これは,「$X$$F$の要素であって$A$の要素でないことはない」といえるかどうかを考えていることであるから,集合$F$と集合$A$の補集合not($A$)の共通部分が無ければ,つまり $F\cap\mbox{not}(A)$が空集合であれば必然性があって,空集合でなければそういう必然性がないことは容易にわかる.そこで,「$X$$F$の要素であるときに,それが$A$の要素である必然性」を$N_F(A)$と書き,そのような必然性があるとき,$N_F(A)=1$,必然性が無いとき,$N_F(A)=0$と書くことにすれば,

(5.4)

となる(図5.2参照).

図 5.2   クリスプ集合の必然性測度の例

ここで,式(5.3)の$\Pi_F(~~)$と,式(5.4)の$N_F(~~)$は関数とみたとき,全体集合$U$の部分集合の全体を定義域とし,$\{0,1\}$を値域とする集合関数となっており,それぞれ次節で説明する可能性測度,必然性測度の特別な場合となっている.

平成12年5月17日