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: 真理値集合と完備束 : ソフトコンピューティング 講義資料(II) : 確率限定の実例   目次

ファジィ論理と種々の論理体系

ファジィ理論は,Zadehによるファジィ集合という概念の提案に端を発している.これは,それまでの集合の概念の一般化である.ここで,一般に集合論は,それを基礎付ける論理と直接にかかわっている.周知のように,数学的真理について考える体系を与えるのが論理であり,現代数学のすべては集合論の枠組みのなかで語られる.つまり,集合論を扱うということは数学基礎論を扱うことである. ファジィ理論においても,その中心となるファジィ集合を基礎付けるために論理に関する議論が必然的に必要となり,また事実,行われている.このような努力は,ファジィ理論の生い立ちからそうであったように,特に応用的な立場から続けられてきたが,近年,数学基礎論の立場からの,より厳密な理論づけの動きも見られるようになってきている. ファジィ理論(ファジィ集合論,ファジィ論理)は,数学基礎論にかかわる問題であるから,応用の範囲も非常に広い.極端にいえば,いままでの数学的なアルゴリズムはすべて,その論理体系をそっくりファジィ論理体系に入れ換えることにより,ファジィ化されてしまうことになる(それが工学的に有用であるかどうかはさておいてだが).ファジィ論理は,それ以前の論理の一般化であるから,その意味では,以前の論理体系の上で作り上げられたアルゴリズムを一般化する力を持っており,これが,ファジィ理論を応用の立場からみたときの最大の魅力となっているのだ.つまり,応用の立場からすると,ファジィ論理は通常の論理を包含する,より強力な論理であるといえる. しかし,基礎的な立場からすると,ファジィ論理自体に関する議論は通常の論理の上で論じられている.つまり,ファジィ論理で説明できることは,原理的に通常の論理で説明可能である.通常の論理で説明可能だからこそ,ファジィ論理に基づくアルゴリズムが実現可能となる.この意味ではファジィ論理は,通常の論理に包含されているともいえる. 以上のように,ファジィ理論は,応用の立場からすると通常の論理の拡張となっており,また,基礎の立場からすると通常の論理によって論理づけられるものであるというように,通常の論理と2つの面で非常に密接にかかわっている.したがってこのファジィ論理を画像や図形の分野で応用とする場合には,通常の論理そのもの及びそれらとファジィ論理(と,そこに立脚するファジィ理論)との関係について無関心ではいられなくなる.本章では,このような観点に立って,通常の論理(古典論理,直観主義論理,様相論理)について考察し,さらにそれらとファジィ論理との関係についての考察を加える.ただし,種々の論理はそれぞれが数学的な一大分野であるし,また,ファジィ理論のこういう方面からの議論はまだその研究が始まったばかりで体系化されているものではない.したがって,無学な筆者がこれらを体系的に解説することなど望むべくも無いことは明らかである.以下では,筆者が現在までに断片的に理解していることについて説明する.



平成12年5月17日